itochan room
[ bar伊藤 ] - 熊本市上通町11-6 エイブル並木坂ビル3F  [ TEL.FAX ] 096-323-8688
[ 営業時間 ] - 19:00 ~ 翌2:00  [ 定休日 ] - 日曜日

2006/10/24

いい日,旅立ち,あとの祭り。[6]

Category: 09.あらかじめ失われた再会 — itochan @ 18:09:42

【思い出に逢いに行く rhapsody in yokohama】2005/09/04

JR横浜駅から僕はMさんに電話をした。

なぜ、今さら会う必要があったのか? そこには「ヤケボックイに火」などという甘っちょろい思いなどはこれっぽっちもなかった。それなのになぜ…。

          ◆          ◆

2週間ほど前になるだろうか。彼女から突然電話をもらったのである。平日の夜、つまり営業中である。

驚いた。実は彼女から電話をもらうこと自体珍しいことなのである。昔、交際していた頃、電話をかけるのはもっぱら僕からだった。10年間付き合っていて彼女から電話をもらったのは、たぶん10回程度ではないだろうか。つまり年に1回程度。それに比べて僕は1年365日、700回以上電話していた思う。

そんな電話嫌いな彼女が・・・何かあったのか?

「珍しいねえ。電話くれるなんて」

「今、大丈夫? 忙しくない?」

「大丈夫。今ひと息ついたところだから」

「暑中お見舞いのハガキ、ありがとう。今度、東京に来るんだって?」

「そう。大学の同窓会があってね。ひさしぶりにみんなに会おうかなって。みんなオヤジやオバサンになっちゃってんだろうな。君もそう?(笑)」

「そうよ。もうオバサン。ところでさあ、bar伊藤のホームページを会社のパソコンで開こうとしたんだけど、どうしても巧く開けないのよね」

「変だなあ。もしかして、会社側で何か仕組んでいるんじゃない? 私用しないようにって。だったらYahoo!かなにかでbar伊藤を検索してみて。たぶん僕んところをリンクしているお店があるはずだから、そこから入り込んだらどう? あんまりパソコンのことよくわからないけど、試してみてよ」

「うん。わかった。やってみる」

「ねえ。それだけのことで電話してきたの?」

「・・・うん。・・・ ・・・。」

「それだけじゃないだろ。何かあったの?」

「どうして?」

「だって、君から電話かけてくるなんて珍しいじゃん。昔から君はかけてこない人だったから」

「・・・ ・・・」

「泣いてるのか? どうした? あっ、お酒飲んでるだろ!」

「へへ、うん。・・・」

「オマエ、お酒飲むとすぐ泣くからなあ」

「グスグス・・・。ん、もういい。ゴメンナサイ」

「大丈夫かよ?」

「大丈夫!」

随分前のことだが、僕が熊本に都落ちして1年くらいした頃だったと思う。同じような電話を彼女からもらったことがあった。やはり、泣きそうな声で「熊本へ行っていい?」という内容だった。その時、僕はうなずけなかった。その半年後に会いに行った。

「どうした。元気ないぞ。9月にそっちへ行くからその時会おう? 食事でもしようか。どこがいいかな? そうそうスペイン料理屋はどう?」

「良かった。そのお店だったらまだやってるわ。昔一緒に行ってたお店が次々つぶれてしまっちゃったから」

「そうだよな。もう10年以上になるからね。閉めてなくて良かった」

そのスペイン料理店は僕らのお気に入りのお店だった。当時儲かっていたのだろう。お店のまん前にバールまでこしらえたほどだ。今は東京・目黒にも出来たとか・・・。

タパスがとても美味しく、ハモーン・セラーノや、うなぎの稚魚のビルバオ風(これはタパスじゃないかもかも?まっ、いいか)など食べながらワインを飲んで楽しい時間を過ごした。いつも二人でワインは2本以上。お店の人も驚いていたな。

再会の約束をした僕は、営業中ということもあって電話を切った。しかし、少しだけ不安もあった。もしかしたら・・・そんな予感がどこかにあった。

          ◆          ◆

プルルルル・・・コールが4回鳴った時、彼女は電話に出た。

「伊藤です。一泊の同窓会が終わって、今横浜に来てるんだけど」

「そうなの。ご苦労様。・・・」

嫌な予感。話しぶりにどうも元気がない。

「どうした? 元気ないね」

「実は3週間ほどずっと体調が悪くて。ずっと熱が下がらないの・・・」

「風邪か?」

「かも知れない。病院にも行ってないの」

「どうして・・・」と言ったところで、僕は言葉を止めた。それ以上聞く気にはなれなかった。答えは予想できた。

「それじゃ、会えないなあ。明日は仕事だろ? 行けるのか?」

「サラリーマンだもん。行かなくちゃ」

「わかった。それじゃ会うのはやめよう。俺が行って看病すると言っても、君のことだから断るだろうし」

「うん」

昔からそうだった。何でも一人でどうにかしようとする人だった。たぶん僕と別れた後も、いろんなことにぶつかっても他人には頼らないで生きてきたんだろう。

“私は自分が一番好きなの。だから他の人の面倒までみられない。一人で生きていく”

10年前、別れ際に聞いた彼女の言葉だ。

そんな彼女だから。泣きながら電話してきた時、これは会うべきだと感じ、僕は今回の旅の途中で会う予定を入れたのだった。

「それじゃあ。またな」

「本当にごめんなさい。お元気で」

病の床からの、か細く泣きそうな彼女の声。僕は電話を切った。その瞬間、彼女の意思を無視して見舞いに行こうかとも考えた。だが、やめた。もう、これ以上・・・。僕は乗るはずの電車をやり過ごし、反対方向の東京駅へと向かった。

そんな僕をよそに、眩しいほどの真っ青な九月の横浜。額をしたたり落ちる汗はいつのまにか涙に変わっていた。

言い出せないことを、聞き出せもせずに・・・

いい日,旅立ち,あとの祭り。[7]

Category: 09.あらかじめ失われた再会 — itochan @ 18:08:16

【とにかく横浜を離れたい・・・ Go West!】2005/09/04

行くあてを失った僕は、糸の切れた凧のようにふらふらと駅構内を歩いていた。そして、東京駅方面行きの電車に飛び乗った。

9月5日、明日の月曜日は先輩と会う予定だった。コピーライターだった時代に一緒に仕事をしていたNさんの経営している居酒屋に行くつもりだ。かつてNさんはグラフィック・デザイナーだった。

時は、バブルが弾けて皆がてんでんばらばらに散らばって行った90年代初頭。Nさんも例に洩れずデザイナーに見切りをつけ、焼き鳥屋で働くことにした。それから数年後独立。現在、杉並区南高円寺で奥さんのA子さんと居酒屋(自身ではメシ屋と言っている)をやっている。

2年前に上京した際は、Nさんの自宅でパーティを開いて迎えてくれた。今回は、お店にうかがう予定だ。お客さんとしてNさんと積もる話がしたかった。

しかし、再会のドタキャン。すべての予定が狂ってしまった。Nさんには申し訳ないが、お店に行くのをやめた。

         ◆               ◆

東京駅13番ホーム。僕は新幹線乗降ホームに立っていた。

行くあてなどない僕は、券売機の前でとりあえずポケットの中にあるお金で行ける所までのチケットを買い求めた。行き先は名古屋になった。2、3回ほど行ったことがあるが、特別思い出や知人がいる都市ではない。ホームで新幹線が来るのを待った。「ひかり」もいいが、今回は「のぞみ」に乗ろうと思う。初めてだ。

待つこと13分。ホームに「のぞみ」が滑り込んできた。あの、特有の顔つき。まるでカモノハシのような先端部。カッコイイんだか、不細工なんだか? なんとも不思議な形をしていた。

僕は自由席に乗り込んだ。喫煙席を選んで。それが間違いだった。その車両。まるで燻製室。発車した途端、乗客全員がタバコに火を点けた。狭い喫煙車両は一瞬にして燻製室と化した。あまりのすごさに僕は燻り出されるようにデッキへと避難した。

「のぞみ」の車両。気づいている人も多いだろうが、車両ボディの横っ腹に「AMBITIOUS」と記されている。正確には「AMBITIOUS JAPAN!」。新幹線品川駅開業のキャンペーンでロゴが取り付けられたものらしい。昔々、郷ひろみが歌った「じゃぱぁ~ん!]というヘンな節回しの日本語発音の英語と、山口百恵の「いい日、旅立ち」、そして国鉄時代の「ディスカバー・ジャパン」これらが一緒くたになってアタマの中を駆け巡った。

かのクラーク博士の言葉“Boys,be ambitious”。「のぞみ」の言い換えでこの単語を選んだのか? カモノハシみたいなトップ・フェイスと「AMBITIOUS」の組み合わせ。そのセンスに唖然とするが、まっ、とにかく日本的といえば日本的である。

再会あらためドタキャンの旅となった僕の気分はブルーのひとことに尽きる。これから始まるアテのない旅。行き先を見失った僕は、風に吹かれて気の向くまま。そんな僕に、「AMBITIOUS」と大仰に記された電車はあまりにも不釣合いだった。

いい日,旅立ち,あとの祭り。[8]

Category: 09.あらかじめ失われた再会 — itochan @ 18:07:18

【名古屋の夜。ポニーテールはふり向かない】2005/09/04

名古屋駅に着いたのは午後6時近く。まだ、街は明るかった。新幹線とはいえあまり座り心地は良くなかった。腰が痛い。これだから日本の交通機関はダメなんだよなあとブツクサ言いながら駅前に出た。

名古屋はずいぶん前に一度来たことがある。しかし、今回は仕事ではなく遊び。しかも通りすがり。さて。どうしたものか? 宿も決めていないし、食事もしたいし・・・とにかく駅前をアチコチ散策してみることにした。宿はビジネスホテルで十分。後で探せばいい。

街をあちこち見て回っているうちに日も暮れはじめてきた。お腹もグ~と鳴った。考えてみれば、お昼に城ヶ島でトコロテンを食べたきりだ。お腹も空くはず。

名古屋といえば「味噌カツ」あるいは「手羽先」。こう決めたい! ところが今日は日曜日。ほとんどのお店がお休みだった。途方に暮れた僕は熊本の知人にメールで「旨い店、紹介して!」と連絡をとった。旅好き、食べ好きな彼のことだから色々知っているだろうな、と。ところが返事は「わかりませ~ん。どの居酒屋でもオーケー」と。ガクッ・・・。

気を取り直して・・・イヤ、まずはネット・カフェを探そう。そこからメルマガ[伊藤通信]を送ろう。メシはどうせ居酒屋だし、1時間もあればメルマガは送れる。

メシ処は中々見つからないが、ネットカフェはすぐ見つかった。僕はすぐさまキーボードを叩き始めた。出張版メルマガ[伊藤通信]の配信。

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こんばんは。出張版[伊藤通信]です。

昨日は怒涛の同窓会一泊コンパでした。皆オヤジ・オバサンになっていて・・・でもちっとも変わんなくて、朝の3時近くまで延々と飲み、語り合いながら旧交を温めました。

二日酔いの頭を抱えた中年男女13名で神奈川県は城ヶ島へ。波しぶきが見事な最高の景勝地。僕はそんな眺めもそこそこにところてんを食べながら死んでいました。

で。一路、のぞみで名古屋入り。愛・地球博のせいか、駅周辺は黒山の人だかり。人波をかき分けカフェで一息。メルマガ書いています。

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メルマガを配信し終えた僕は、さっきの街探索で目ぼしをつけておいたチェーンの焼き鳥屋に向かおうとした。すると、ケータイにメールが・・・

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こんばんは!

名古屋の夜はどうですか!?

お土産話楽しみにしてます。楽しんできてくださいね~!

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tomoちゃんからのメールだった。ありがとう。やがて、もう一通。

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楽しい旅のはじまりですかな?

熊本は台風の兆し。明日か、明後日に再接近の予報。いかがなりますことやら。

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カフェ・タイムレスのサト君からだった。そういえば台風が来ていたよなあ。旅の途中で熊本に上陸でもしたら・・・お店は大丈夫かなあ~? いや、それよりオフクロだ。大の台風怖がり。昨年の台風で結構我が家も大変だった。今回のはもっとスゴイということらしい。またもや、オフクロ、数珠持って仏壇の前に座り込むんじゃなかろうか? 心配だ。兄貴、頼むぞ。

と、心配しても仕方ない。というかそれとは裏腹にお腹はさっきから鳴りっぱなし。さっきの居酒屋に飛び込んだ。

「いらっしゃいませ~っ!。お一人様?」

チェーンの居酒屋とはいっても、どこかうらぶれた感じだった。しかし、働いているのは若い兄ちゃんとおネェーちゃんだった。お客さんも僕を含めて4組8名。場末の居酒屋的風情。これまたいい。とりあえずカウンター席(といってもテーブル席は2つほどしかないが・・・)に着いた。

「ビールください。ビンで」と声をかけた。までは良かったが、思わず「アッ!?」と心の中で叫んだ。もしかしてSUPER DRYかな? キリンならいいんだけどな・・・

「瓶ビールは何?と僕がたずねようとするより早く、「アイヨォー!」という威勢のいい声とともに出されてしまった。そこにはギンギンに冷えたSUPER DRYがで~んと置かれていた。アチャー!!

我慢した。飲めないわけじゃない。

「何か焼きますか?」と兄ちゃん(店長らしい)

「そうね。鶏皮とズリとレバーを塩で。あっ、それに手羽先を」

「アイヨォー!」

お客さんもちらりほらりとやって来て、店内は少しばかり賑やかになってきた。僕のオーダーも通ってはいるものの接客に忙しく、中々出て来ない。僕はピリピリと辛いSUPER DRYをチビチビ飲りながら店内を見回していた。

すると、1階があわただしくなってきたせいか、2階から別のおネェーちゃんが助っ人に降りてきた。ほほおっ。3人でやっているだ。その子は洗いものを担当した。

ポニーテールのその子は細身だった。年齢はいくつぐらいだろう? しかし、棚で顔が見えない。可愛いのかな? 

オヤジである。まさしくエロなオヤジである。しかし、気になるものは仕方がない。席をずらしたり、少し立ち上がったりしながらお顔を拝見しようとした。が、中々見えない。やりすぎだよなと諦めた僕は残りのビールをコップに注ぎ、ひと息で飲み干した。次はそば焼酎をオーダーした。

・・・なにも名古屋まで来て、宮崎のそば焼酎を飲まなくてもいいのに・・・

ところが、だ! さっきまであれだけ顔を見しようとして見られなかったポニーテールの子が僕のオーダーを運んできたのだ! ラッキー!!

僕は変態に思われはしないかという心配もよそに、その子の顔をまじまじと見たのである。ガッ、ガァ~~~ン!

「似てる。そっくりだ!」驚いた。

「マジかよ」

頭の中では古い恋の傷がフラッシュバックしていた。気絶しそうだった。

なんと、そのポニーテールの子は5年前にフラレた女性にそっくりだったのである。しかも、割れたようなしゃがれた声質まで。焼酎を置き、無愛想に戻って行く時の後ろ姿までも・・・細身というより着痩せするタイプの子。そこまで似ているのである。持っていたタバコを落としそうになった。

よりにもよってこんな気分の時に。25年ぶりに会った仲間(女性軍)は変わり果てていたし、会えるはずの横浜の彼女からはドタキャンくらうし、そして今度はポニーテールの子かい?・・・カンベンしてよ~。

以前、占ってもらったことがある。占いは嫌いだったが、どうしてもということで仕方なく見てもらったのだが、その時言われたことが・・・

「あなたには女難の相が出ています」だった。

その言葉が突然頭の中に現れた! なんだよ。とことん落ち込めってことかい?

そんなこんなで。僕は早々にお店を出た。やるせない気分でいっぱいだった・・・

名古屋の夜。僕はあの時期食べた手羽先の味をまったく覚えていない。あれほど期待していたのに。そして、覚えているのは、ポニーテールの彼女が作ったそば焼酎の水割りがやけに濃かったことだけだ。

いい日,旅立ち,あとの祭り。[9]

Category: 09.あらかじめ失われた再会 — itochan @ 18:06:40

【特急ワイドビューひだに乗って】2005/09/05

名古屋での一夜を過ごした僕は、早朝ホテルをチェックアウト。名古屋駅に向かった。

行き先未定の旅。実は同窓会の後、東京で1、2泊したあとは東北方面へ行こうかと考えていた。仙台、盛岡、よし足を伸ばして秋田へ行って旨い魚とお酒でも・・・などと思っていた。がしかし、とんだドタキャンですべてがパーになった。イヤ、してしまったんだ。で。ポケットにあったお金で行ける所までチケットを買ったら、それが名古屋だったというわけだ。

さて、明日はどこへ向かおう。昨夜、ホテルのベッドでいろいろ考えた。で。思いついたのが郡上八幡。いつか行きたいと決めていた町。長良川沿いの水と踊りで有名な小さな町だ。

名古屋駅構内の本屋へ行った。まず、ガイドブックを見ないと始まらない。昔、旅行関係を仕事としていたとはいえ、まったく知識はない。「るるぶ」「まっぷるマガジン」などなど立ち読みでパラパラと見ながら一冊のガイドブックを購入。

さっそく交通アクセスを調べようとコーヒー・ショップに飛び込み、カフェラテとサンドイッチをオーダーし、席に座り下調べを始めた。目の覚めるような・・・大げさではなく、本気で舌が火傷しそうな熱いカフェラテをフーフーとすすり、これまた用心深く口に入れないとこぼれ落ちてしまいそうなユルユルなサンドイッチを頬張りながらページをめくった。このお店で一番人気らしく、甘エビ・卵と野菜がたっぷりのサンドイッチ。黒ごま入りのパンとの組み合わせがヘルシー・・・だとか。まずまず美味しかった。

サンドイッチの上手な食べ方を誰か教えて

今日は月曜日。朝食をここで済ますOLさんが多いこと。しかも半分近くの人がタバコを吸っているではないか! 男性の喫煙者が激減している昨今。オソロシイ光景である。僕の真正面の若い女性もプカプカ。確かに僕も愛煙家だが、食事中に真正面で煙を吹きかけるように吸われたのではたまらない。失礼のないように何気なく店内奥の吹き溜まりのような席に移動した。

なんと、そこはまさに燻製室のような一角だった。昨日の新幹線・のぞみを思い出させた。あまりの煙たさに再び席を移動。サンドイッチとカフェラテの乗ったトレイを持って左右。ああ、情けない。自分のことは棚にあげての話だが、禁煙タイムあるいは喫煙席を設けてはどうだろう。

乗る電車が決まった。名古屋発特急ワイドビューひだ。これに乗って途中の美濃太田まで。そこで長良川鉄道に乗り換えれば郡上八幡へ行ける。よし、これだ!

さて、これから始まる鉄道の旅。昔、コピーライターをやっていた時代は鉄道に乗ってばかりいたなあ。あの頃は、もっぱら特急なんて使わず鈍行列車ばかりだった。最も印象に残っているのは『日本最長鈍行列車~追い越される旅』というテーマで乗った大阪発出雲大社行きだった。とにかく長かった。たぶん13時間ほど乗ったのではないだろうか?

今回はゴージャスにも特急。しかも“ワイドビュー”なんて肩書きまで付いている。どんな乗り心地だろう。期待するなあ。名古屋から美濃太田まで所要時間は約40分。あっという間だ。

JRのまわし者ではないが、快適な鉄道の旅。さて、缶ビールでも飲みながら出発進行! 実は構内売店でしっかり買っていた。加えてマーメード・カフェでモルタデラパルミジャーノサンドというコジャレたサンドイッチもテイクアウトしていたのだ! こういうところだけ用意周到な僕だった。

鉄道の旅に缶ビールは必需

いい日,旅立ち,あとの祭り。[10]

Category: 09.あらかじめ失われた再会 — itochan @ 18:05:08

【期待と裏腹、濁流の長良川】2005/09/05

美濃太田駅で20分ほど連絡待ち合わせ。ここから乗り継ぐ長良川鉄道は単線の1両編成ワンマン車両。ひとり旅にはお似合いのトコトコ各駅停車の旅のはじまりだ。

あいにくの雨。そういえば台風が日本に向かっていた。九州は大丈夫だろうか? ニュースによると九州直撃ということらしい。心配だ。とはいってもこんな岐阜にいる僕に何が出来るだろう。電話したとろこで余計にオフクロに心配かけるし、逆に自分も不安がつのる。ここはひとつ忘れよう。

午前9時50分。僕を含めて五人の乗客を乗せて長良川鉄道北濃行きは、ヒュィーと悲鳴のような警笛を鳴らして美濃太田を定刻に発車した。

これから1時間20分のローカル線の旅。あいにくの雨で川の眺めも今ひとつだろうが、生活感あふれる乗客たちでもウォッチングしながら楽しもう。・・・ところが乗り合せた5人の乗客も停車のたびに1人降り、1人降りと・・・結局途中で乗っているのは僕1人。そして運転手だけになってしまった。

途中の車窓の風景。期待していた。わざわざ鉄道にしたのは長良川沿いに走るからだ。のんびり写真でも撮りながら、缶ビールでもひっかけようかと・・・

「鵜飼で有名な長良川=鮎の棲む清い流れ」そんなイメージを抱いていた。だが、車窓に映る長良川は台風の影響でものすごい濁流だった。鮎の簗(やな)場もやはり濁った水を浴び、ただただもの寂しい光景だった。

乗車時間、約1時間20分。乗客1人の長良川鉄道の車内で、砂をかむような味気なさを感じながら僕はただぼんやりと車窓を流れる風景を眺めていた。

郡上八幡着、午前11時過ぎ。やっと着いた! 当然、雨。しかし、雨に濡れた古い城下町もまたいいもんだ。旅の師匠N氏の口癖ではないが「これもまた旅の楽しみ」そう思い、気を取り直した。

郡上八幡は名水と踊りの町。名水百選第1号に選ばれた「宗祗水(そうぎすい)」をはじめ水にちなんだ見所も多い。

また、老若男女が夜を徹して踊り明かす「郡上踊り」でも知られている町。毎年7月中旬から9月の上旬の約30日間にわたる開催期間中はたくさんの観光客でにぎわう。

で。僕が訪れた郡上八幡は・・・一昨日までの祭りの熱気はどこへやら。山あいの城下町は、ひっそりと静かな日常にもどっていた。まさに“バカばい”であった。

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