itochan room
[ bar伊藤 ] - 熊本市上通町11-6 エイブル並木坂ビル3F  [ TEL.FAX ] 096-323-8688
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2006/11/06

筑前煮のようなもの

Category: 10.実録!伊藤家の食卓 — itochan @ 17:14:57

さて出勤しようかという時だった。おもむろにオフクロが何かを差し出してきた。

「お店で出すとよかよ」

「ん。でも、月曜日だし、ましてや連休明けだしねえ。お客さん少なかと思うよ」

「そうたくさんはないけん。持って行きなっせ」

オフクロ手製の煮物である。農家出身のせいで、もうした野菜の煮物はおいしい。具は、ジャガイモ、コンニャク、ニンジン、シイタケ、タケノコ、レンコン、鶏肉。

まあ、これも幼い頃から食べつけてきた息子だからそう思うのだが。いわゆる料理人のつくったものとはまったく違う。火はしっかりと通っていてカタチがくずれるほどやわらかく、味付けも甘い。いわゆる“田舎の味”である。だが、僕は大好きだ。

オフクロはシイタケが苦手である。食べる時はシイタケだけ除けて食べる。まるで子どもだ。僕は偏食はまったくない。というか一人暮らしを長くやっていたら食べられないものなんてなくなってしまった。というよりも貧乏な一人くらし。そんな贅沢は言ってられないというのが正直なところだ。

ところで。昔からこの煮物。僕は「煮物」と呼んでいた。そこでオフクロにこれは何かと聞いてみた。すると「筑前にのごたるもんタイ」という答え。お袋の口から筑前煮という言葉が出てきたのには正直驚かされた。そうか筑前煮か。あらためて口してみた。すると、どういうわけか今までの味と少し違って感じられた。こういうものなのか、オフクロの味というものは。

2006/09/27

ナスとピーマンのトマト煮

Category: 10.実録!伊藤家の食卓 — itochan @ 18:54:09

今朝、台所へ行くとテーブルの上にトマトピューレが置いてあった。「えっ、オフクロが使うのか、コレ?」伊藤家にとってあまりにも似つかわしくない物がそこにあったので驚いてしまった。そして数分後、その正体が姿を現した。食卓に並んだ色鮮やかな料理。それがコレだ。↓

「えらいまた昼から豪勢やね。どぎゃん風の吹き回しかい?」

「新聞に載っとったヤツば作ってみたタイ。どぎゃんかい?辛かかい?」

「ううん。おいしかよ。ピーマンは・・・」

「黄色にしてみた。新聞は緑だったバッテン」

さすが伊藤家の食事を作って50年のオフクロ。人と同じじゃツマランと考えての仕業か? しかし、こうやってオフクロのアレンジで成功する確率が5割だということも僕は知っている。でも、ありがたい。

「よおトマトピューレを買って来たね」

「ケチャップじゃイカンとかなって思うたバッテン。“ピューレ”って載っとったけん買って来たったい」

天晴れ!というか安心した。もしケチャップで作っていたなら・・・お子様ランチみたいな味になっていたに違いない。それにしてもよくトマトピューレが買うことが出来たなあと思った。なにせ「にぎり鮨を買ってくる」と言っては約5割は“わさび抜き”のやつをかってくるようなオッチョコチョイなオフクロである。

「どれがピューレかわからんけん、スーパーでおねえちゃんにピューレって言うとはどこにあるね?って聞いて買ってきたタイ」

笑いながらオフクロは話す。たぶん、いや僕が記憶する限りでは伊藤家の台所にトマトピューレが並んだためしはない。そして、このトマトピューレ、今度料理に使われるのはいつのことやら・・・

 

で。オカズは中々の味だった。で。ご飯を・・・栗ごはんだ! そういえば昨日オフクロはせっせと栗の皮むきをしていた。伊藤家の栗ごはんは見た目はホントン地味である。色味もなく。しかし、薄味だが、やはりウマイ! 他人が食べたら「味気ない」とボヤくかも知れないが、これはこれでいいのだ。

秋の旬であるナスと栗。お昼からなんとリッチな食事だろう。まあ僕にとってはこれが朝食なのだが。今日も頑張ってくれたオフクロに感謝。

いただきま~す!

2006/06/16

和風あんかけスープハンバーグ、か?

Category: 10.実録!伊藤家の食卓 — itochan @ 20:14:01

問題です。いったいこのメニューは何でしょう?

テレビで観たのか知人から聞いてきたのか。オフクロによる久しぶりの新メニューである。その見た目、なんとも可愛らしいというかキテレツというか。食卓に並べられた時、僕は驚いた。

答えは「ハンバーグ」である。しかし、いつものハンバーグではない。タマネギをくり抜いた中に詰め込まれている。しかも、あんかけ。そしてソースの代わりにスープ仕立て。昭和ひとケタ生まれのオフクロにしては中々シャレたことを。

僕はおそるおそるお箸で食べようとした。あんのかかった肉は少し固めだったがうまく掴めた。が、ここで問題が生じたのだ。なんと外側は大丈夫なのだが中のほうがまだ生っぽいのである。

仕方なくタマネギに挑戦。当然お箸では切れないのでナイフで。またまた問題。やはり外側は火が通っていたが芯の方までは通り切っていなかったのだ。テーブルナイフでは切りづらい。どうしたものかとオフクロに問いかけた。

「ねえ、中はまだ生煮えだよ」

「あらら~そぎゃんかい」

「外側のタマネギが厚過ぎたんじゃないか?」

「なら、チンしよっ」

しばしのオアズケ。再びお膳に登場してきたものは・・・湯気がモクモクと立ち、それは口に運べるほどの生半可な熱さではなかった。僕は少しずつ、砂山くずしのようにして肉を壊しては口に運んでいった。そしてフー、フーと。味はいつもながらのオフクロの味。うまい。が、やはり熱い。

「んん~・・・」僕は考え込みながらも少しずつ口に運んでいった。

「なんでん失敗せんとわからん。次は失敗せんから」とオフクロ。

聞けばオフクロは嫁いで来た頃は料理はまったく出来なかったそうだ。八百屋さんに行っても何を作っていいものやら、はたまた何を買っていいものやら・・・オマケに作り方も知らない。しかし、そこはひとケタの女。ご近所の奥さんを見つけて今日は何を作るのか聞き出し、同じものを買い求めたそうだ。

それからがオフクロのすごいところ。そのままその奥さん宅までついて行き、実際に作っているのを見て、それを覚え、急いで我が家に帰り今見た作り方を実践していったそうだ。天晴れ!

オフクロも相当苦労したんだろうな。「食事は姉さんがいつも手伝ってたし。あたしゃ馬のエサやりしかやってなかった」と。

そんなオフクロが試行錯誤で料理を。親父や伯父、職人さんたちに毎日三度三度出していたという。「うまかったかどうか知らんタイ。誰もナンも文句言わんで食べなはった」と笑いながら話す。

そんなオフクロだが、すでに50年以上もこうして毎日造り続けてくれる。ありがたい。当然のように食べていた毎日の料理。その裏話を聞くと涙が出てくる。感謝しても感謝しきれない、親のありがたみ。

さて、今日の和風あんかけスープハンバーグ。味はまさに伊藤家の味でうまかった。が、オフクロとしてはショックだったのだろう。「また作るけん。今度はうまかよ」としきりに言う。僕も「そうタイ」と相槌を打った。

結局、僕はナンダかんだと言いながらも全部平らげた。この年になって、久しぶりのチャレンジ。なんだか自分も忘れかけていたような気がした。

「なんでん失敗せんとわからん」

笑いながら言うオフクロの言葉がやけに沁みた、母の日の夕食だった。

2006/02/09

子バカ中華丼

Category: 10.実録!伊藤家の食卓 — itochan @ 18:38:11

色取りも食欲をそそる

今朝の朝食--正確には僕の夕食あるいは夜食だが、中華丼だった。

午前5時にいただく中華丼。とりたてお腹が空いているわけではないのだが、用意されれば自ずと箸がのびてしまう。食卓をはさんで食べるオフクロのメニューは、いわゆる朝食的献立。いつもながら奇妙な光景だ。

最近、健康を考えてのことから我が家の献立は中華丼に限らず塩分は控えめ。そのせいか味付けはやや甘めだ。嫌いではない。どちらかといえば塩っ辛いやつよりいい。

それにしてもオフクロの中華丼は絶品だと思う。具材は特に凝ってはいない。当たり前のモノばかり入っている。味もいいし、見た目の色取りも中々だ。多少塩気を強くすればお店で出しても十分イケると思うのだが、こういうのを「親バカ」ではなく「子バカ」というのだろうか(笑)。

以前、オフクロから聞いたことだが、伊藤家に嫁いで来た時はまったく料理が出来なかったらしい。誰から学んだのだろう? 今度、機会をみはからって聞いてみたい。

2006/01/24

ロールキャベツ

Category: 10.実録!伊藤家の食卓 — itochan @ 20:55:04

午前11時。せんべい蒲団で目を覚ます。我が家には、もう誰もいない。兄貴は当然仕事。オフクロは病院へ治療を受けに出かけている。

僕は目ボケまなこで階下へ。卓袱台に着く。テレビをつける。新聞を開く。お茶を淹れて飲む。いつもならここでタバコをくわえるのだが、最近禁煙しようかと思い、止めている。正直、今日から始めた。

玄関のシャッターも下りたまま。薄暗い家の中はがらんとしている。僕はパジャマのままシャッターを上げに行く。昼間の光がまぶしい。今日もいい天気だ。

再び卓袱台に着き、お茶を飲む。さて、食事だ。台所に行くとガス台の上に鍋がかけてあった。蓋を開けると「ロールキャベツ」が6個。昨夜のご飯のおかずに違いない。ガスを点火して温めなおす。十分に温まるまでの間、ご飯をよそったり、納豆やお新香などのおかずを用意したり。

一人で食べる食事はなんとも味気ない。せっかくのロールキャベツもくたっとしていて、口に運ぶやボロッとくずれてしまった。出来立ては美味しかっただろうなあ。仕方ない。否、たとえ温めなおしでも誰かと食べたなら、もっと美味しいに違いない。

ふと思った。オフクロの夕食は、兄貴の帰宅が遅いこともあり、たぶん毎日一人で食べているのだろう。僕でさえこうなのだから、人一倍寂しがり屋のオフクロは・・・なんだか悲しくなった。

出来る限りお昼は二人で食べるように心がけていたが、やはり夕食となると・・・煮え過ぎたロールキャベツ。その濃く煮詰まった味に僕はむせてしまった。

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