itochan room
[ bar伊藤 ] - 熊本市上通町11-6 エイブル並木坂ビル3F  [ TEL.FAX ] 096-323-8688
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2005/10/25

僕が音楽を聴く理由

Category: 04.こんな僕でよかったら — itochan @ 18:40:47

bar伊藤のホームページ。初めてご覧になられる方は「いったいこのサイトは何屋のサイトなんだ?」と思われることだろう。

「こりゃあ、BARのサイトじゃなくて中古レコード屋のサイトだよ」そんな声も聞こえてきそうだ。

確かに。言われてみればそうかも知れない。飲食店=和酒BARでありながら、お酒のページは頻繁に更新していないのは事実である。しかし、僕がどんなにお酒のことを書いたとしても、この世の中にはもっと詳しい方が山ほどしるし、酒蔵のサイトを開けば製造者の方々の熱のこもった紹介がなされている。今さら、僕がアーだコーだ解説したところでかないっこない。

以前、大好きなToiToi Stock TravelのTさんから、こんな助言をいただいたことがある。

「お酒のことをこと細かく説明することはないよ。そんなの専門家に任せればいい。伊藤ちゃんと、そのお酒の関わり、関係を面白く書けばいいんじゃないかな」

同感である。僕はバーテンダーのプロであって、お酒のプロではない(これは少々誤解を招く表現かも?)。

つまり、バーテンダーはお酒を売るのが仕事ではない。そのお酒の入った器(グラス)の向こう側のお話をしながら、お客様と有意義な楽しい時間を過ごすのが、僕らバーテンダーの役目だと思っている。

器の向こう側。つまり、その中に入っている液体のこと・・・まるでレコード盤の細い溝の中の小さな埃レベルの・・・話をしたところで、それは“オタク”でしかない。酒オタクに任せておけばいい。

器の向こう側。たとえば、そのお酒と初めて出会った時の話。「いつ」「どこで」「誰と」「どんな風に」「何を肴に」・・・たくさんの関わりがそこにはあるはずだ。失恋酒もあれば、喜び酒も。旅先で出会った酒もあれば、父親に隠れて舐めた盗み酒。

そう、お酒にはドラマがつきもの。そのドラマをツマミに一献やって欲しいだけだ。

たとえば、日本酒に『鄙願(ひがん)』という名酒がある。bar伊藤でも看板酒として常備している。このお酒には誕生秘話というものがある。これは以前、サイトでご紹介したかと思うので、ここでは割愛させていただくが、こうした秘話を聞きながら、遠い雪国越後に思いを馳せながらぐびりといただく。どれだけうまいことだろう。

お酒の味は、そのアルコールの液体そのものの味ではなく、そのお酒が持っているドラマの味である。

話を元に戻そう。で、“音楽”のことである。よく耳にすることだが、若い頃はあれだけ音楽を聴いていたのに、オトナになるとぱったりと聴かなくなり、遠ざかってしまう。ましてや家族を持つと。

だからというわけではない。ただ、今一度あの頃のように音楽を聴いてときめいてもらいたい、そう願ってのことである。

音楽で世界は変わりはしないけれど、少なくとも僕の人生は変わった。

実際に僕自身も音楽オタクと呼ばれても仕方ないのだが・・・かつて駄文書きを生業としていた時代。仕事場から一歩も出ずに3、4日ということが当たり前の日々だった頃。僕は相当のストレスとフラストレーションの中で仕事をしていた。そんな時、僕を救ってくれたのが“音楽”だったのである。

ながら族の申し子みたいな世代ではある。仕事をしながら音楽を聴く。あるいは音楽を聴きながら文章を書く。朝から晩、イヤ朝方まで。ステレオは24時間スイッチ・オン状態。時に大音量で、時に蚊の鳴くような音量で、聴いていた。

たまに打ち合わせとかで街に出ると、寸暇を惜しんでCDショップや中古レコード店に走り込んでは買い込んだ。その成果(?)が、お店の棚を埋め尽くしているレコード/CD群である。我が家には、この棚に入り切れない分が山になっている。

僕にとって音楽とは・・・。それは“時間”。何よりも勝る、極上の時間である。

読書家の方にとっての“本”も同じであろう。本を読むこと自体も確かに素晴らしいことである。が、それより本を読むという行為、すなわち読むという時間が大切なのだと思う。ドライブもしかり。目的地があるわけではない。運転するという時間に意義があるのだ。もし、目的地があり、そこへ向かうのならば、それは単に道具(目的)としての位置づけでしかない。それはドライブとは呼ばないだろう。

僕が音楽を聴く理由。それは、ある種“恩返し”のような行為だと思っている。あの頃、あれだけ僕を救ってくれたことに対しての感謝・・・美しいメロディをたくさん教えてもらった。素晴らしい言葉(詞)を教えてもらった。国境を越え、人種の壁を越えて・・・時間と空間を越えて、素晴らしい世界中のドラマを聴かせてくれた。

オトナになったからといって。音楽を忘れないで欲しい。あの頃のように、もっとときめいて欲しい。あなたの部屋の隅にも、きっと埃をかぶったレコードが何枚か仕舞い込まれて忘れ去られているはず。まずは、それらを聴きかえしてみてはどうだろう。意外なことに歌詞を覚えていたりして、そんな自分に驚くはず。きっと。

音楽は裏切らない。これまでも。これからも。僕は音楽を愛し続ける。

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