田村奈津子という人
パソコンで色々と検索をしていた。今回の夏の旅の資料集めを目的としながら。
ふと、東京・自由が丘にあった喫茶店「SONGS」のことを思い出した。僕の音楽師匠N氏と出会ったお店であり、東京いや日本でもトップクラスに良質の音楽をいち早く紹介してくれたお店でもある。
早速僕は検索にかけた。たった一つヒットした。やはり・・・僕は落胆ともつかないため息をついて、そのサイトを開いてみた。
《田村奈津子のエッセイ》と題されたサイト。僕は間違ったかと思った。そして「SONGS」という名前を探した。
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「ソングス」という店が在った。自由が丘駅の踏切を渡ってすぐの、奥沢へ向かうバス通りの右側にある喫茶店だった。・・・・・・
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こんな文章ではじまる「SONGS」と題されたエッセイだった。僕は懐かしさに誘われ読み続けていった。
田村奈津子という女性。SONGSで働いていた人物だということがわかった。年代的にはたぶん80年代の初頭。つまり閉店する少し前のことらしい。その頃、僕も足しげく通っていた一人。週に3日は行って、コーヒーお替りしながら音楽通のマスターと音楽談義に花を咲かせていた。
しかし、この女性の名前にどうしても僕は覚えがない。SONGSで働いている女性たちは女子大生たちが主だったと思う。しかも、その女性たちが日替わりのようにしてシフトを組んで働いていた。いったい全部で何人の人が働いているのか、さっぱりわからなかった。田村さんという女性もその一人ということになる。
どんな人だったかなあ、と僕はサイトを色々と読んでみた。SONGSを辞められた後に、その人は詩人になられていたらしい。そのあたりの経緯はわからない。5冊の詩集を出版されているようだ。
しかし、悲しいことにその女性は40歳で癌で亡くなっていた。2001年のことである。それを知り、僕は愕然とした。その時点では、まだ僕はこの人が顔見知りかどうかはつかめていなかった。だからかも知れない。余計に田村奈津子という人物を知りたいと思った。あちこち検索して探した。そして、やっと、見つけた。
そこには、彼女が写っている写真を並べたコーナーが設けてあった。僕はたじろんだ。クリックして彼女の姿を確認したい。しかし、すでに亡くなっているという事実を前に、クリックすることで、すべてが明らかになってしまうことへの怖さ。僕はマウスを握ったまま、数分間じっとしていた。何も出来なかった。右手の人差し指が震えていた。
知っている人だろうか? そんな好奇心の前にして明らかにすることの怖さ。知らなければ良かったと後悔するかも知れない自分がいる。いや、そんなことはないと諭す自分もいる。
クリックひとつで、すべてが明らかになる。
彼女の過去はおろか、僕自身の過去までも・・・パンドラの箱になってしまうのか・・・
僕は、勇気を出してクリックした。
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インターネットは非常に便利である。瞬時にしてさまざまなことを知ることが出来る。しかし、反面では、知らなくていいこと、知らない方が良かったりすることにぶつかったりする。インターネットは、その意味では残酷である。何の容赦もなく、すべてを明らかにしてしまう。
最近、僕は旅をした。思い出との再会の旅である。期待もあった。不安もあった。しかし、現実は容赦なく僕の前にさらけ出された。喜びがあった。同時に後悔もあった。
時間というものは流れることで、その意味がある。あれから20年以上の月日が流れていた。僕はたまらなく無常を感じてしまった。
これも人生と言ってしまえばそれまでだが。
僕は、そんなに強くない。かといって、思い出の中で生きていこうなんてキザでペシミスティックな人生を送りたいとも思ってはいない。ただ、自分が今、此処にこうして居るということ。つまりそれは、あの時、そこに確かに居たという事実があってのこと。時間は流れるものである。しかし、その流れは途切れることなく、つながっているのである。
思い出との再会で、僕は今あらためて自分の立ち位置を見つめなおすことが出来たような気がする。明日へ踏み出す一歩のために・・・。
思い出の中で出会ったたくさんの人たち、ありがとう。
また、つまづきそうになったら、思い出の扉を開けよう。
■詩人田村奈津子のホームページ
http://www.knet.ne.jp/~toshi/natsuko/
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凄く理解できます。
インターネットに向かいながら「便利さと残酷さを兼ね備えた道具であり凶器でもあるなあ」と日々思っています。
コメント by Mits [訪問者] — 2005/09/26 @ 21:14
インターネットは果たして道具なのか? それとも目的なのか?
最近、よく考えます。
便利さを追い求めたがために地球は今こうなってしまったし。もっと僕らは思慮すべきではないかと、自戒の気持ちを持って向かわなければいけないと思います。
ブログに関しても、自己顕示欲あるいは自意識過剰なものになってしまわないように心がけているつもりですが、時として行き過ぎてしまう傾向のある僕ですから。
ブログは、決して日記ではないと思います。単なる日記であるならば世界に公開する必要などないと。何かを伝えたいがために存在するのだと。
僕が田村さんのことを知ったのも、きっとそういった意味で必然だったのかも知れません。今回のことを肝に銘じていきたいと思います。
コメント by itochan [メンバー] — 2005/09/27 @ 02:38