ご汁とセリの白和え

いつもより1時間ほど遅く起きた。別に昨夜(今朝)が遅くなったわけではない。ただ、あまりの寒さでお蒲団の中で猫していただけなのだが。それでも酒類の仕入れがあるから、そんなにグズグズはしていおられず、ゴソゴソと這い起きた。食卓に行くと、しっかり朝食(一般的には昼食時間)の用意がされていた。
「おはよ。寒かねえ」
「朝から雪が降りよったたい。さっきも降りよったよ」とオフクロは僕のために熱~いお茶を入れてくれた。
「へえ。どうりで寒かったはずばい」
食卓を見ると、いつものようにお味噌汁が・・・いや、いつものとは違う。
「ご汁かい、今日は。節分は明日だろう」
「ええタイ。一日早かったって。大豆もちゃんと買うてあるケン」
そうである。オフクロは毎年、節分には豆まきの豆を買ってくる。だが、「福は内!」と撒くわけではない。ただ、ボリボリと食べるのである。これも我が家の昔からの習わし。
一日早い伊藤家の節分は、豆まきではなく、「ご汁」であった。でも、味は変わらずウマイ。しかも温かい。最高に幸せだ。

遅れて皿が並べられた。見ると「白和え」。ゴロっとした、これもまさに伊藤家の白和えだった。
「セリがもう出回っとったの?」と僕は口に運びながら尋ねた。
「まだ早かねえとは思ったとばってん。キレイかったけん」と相変わらず。確かに旬を大切にするオフクロではあるが、気持ち早いかなと。
「やっぱハウス物かいね? どうも香りが無かけん」
「だろうね。苦味も少なかよ」
「まあ、ええたい。食べなっせ」
いつもこうだ。オフクロとの会話は。最近、僕は職が細ってきた。とりたたて意味はないのだが。あるとすれば失恋のせいか。オンナ子供じゃあるまいしと笑われそうだが、ここ二ヶ月で数キロ痩せた。髪とヒゲもめっきり白髪が増えた。ほんと、いい年こいて情けない(笑)
それにしても、こうして旬を大切にしてくれるオフクロ。究極のパラサイト息子の僕だが、こんな女性どこかにいないかなあ~? そんなことを知人たちに言うと、必ず「いるわきゃ無い。そんな昭和のオンナは!」と。でも、いや、ゼッタイどこかにいる、と僕は信じたい。
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