Street Story~東京'80s (16)
in my eyes...in my memories...
【視界の道草】 元麻布あたり
気のむくままに、いろんな街へ出かけては散歩を楽しんでいると、しばしば時間と空間の迷子になることがある。坂と大使館のある街、元麻布あたりも、そんなところだった--。
地下鉄日比谷線広尾駅近くにあるナショナル・アザブ・スーパーマーケットに買い物に行った時のこと。気候もいいし、ひさしぶりに麻布十番の方まで歩いてみたくなった。
有栖川宮記念公園を左に見ながら南部坂を上る。途中には南部坂教会や大使館などがある。建物の落ち着いた色調は公園の木々とよくマッチしていた。坂を上りつめ、突き当たったら右へ折れ、ゆるやかな一本松坂へ。氷川神社や、ステンドグラスが美しい安藤記念教会を眺めながら歩く。教会の庭ではサルスベリの木が赤い花をつけ、行き交う人の目を楽しませてくれる。
西町インターナショナル・スクール前にくると、にぎやかな子供たちの声が聞こえてきた。元気のいい子供の声は、なんとも気持ちのよいものだ。この学校には外国人の生徒が多く、学校の名前や駐車禁止の立て札などのあらゆる文字が英文と和文で表記されている。これが仲良く並んでいるのがなんとも面白い。校舎のつくりも、東京で見かけるものとはまるで違っている。どちらかといえばアーリー・アメリカン調。ベージュっぽい壁に白い大きな窓枠。古き良き時代のイメージだ。最近の無味乾燥な建物と違って、あたたか味を感じる。黒板に向かってしきりに字を書いている外国人の先生。その横に片付け忘れたのか季節はずれの扇風機がちょこなんと座っている・・・。あたかもアメリカかどこかの街の、しかも何十年も前の風景が、そこにあるような錯覚をおぼえる。時空を超えて、つかの間の異邦人にしてくれる・・・。
散歩の一番の面白さは、日常生活とはまた違った風景や発見ができるところにある。道草もまた生活の調味料だ。
(1985年9月25日)
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コラムの最後に書いた1行。「道草もまた生活の調味料だ。」
最近の自分の生活をふり返ってみて、あらためてうなづきたくなるし、忘れているなと思う。目的のためばかりに動いている。たまには、あてもない散歩をやりたいものだ。
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