美しさの向こう側
■■A Day In The Life・・・
■■きょうの僕を幸せ気分にしてくれた1曲
[2007/05/06]
【風の道】

Boucles d'oreilles(ブックル ドレイユ)/大貫妙子
written by 大貫妙子、arranged by フェビアン・レザ・パネ
performed by 大貫妙子
from the album[BOUCLES d'OREILLES](2007年)
みんな同じ。それぞれに何か抱えて毎日を生きている。何もない人なんて、いない。みんな同じなんだ。カタチは違えど。大きさも違えど。みんな、抱えながら懸命に歩いている。
バー・カウンターに立っていると、毎日最低でもひとつは、そんな話を聞く。僕は何も答えられない。ただ、相槌を打つだけ。所詮、結論は自身が出すもの。決めるもの。アドヴァイスなんて、僕などに出来るはずもないから・・・。
でも、人はその重さに耐え切れず、背負ったそれをひとときの間だけ下ろしたくてバーのドアを押し開ける。バーとは、そんな時のために、あるのだと思う。
バーはやさしく包み込む場所でもなければ、説教を受けるところでもない。ただ、誰にも邪魔されることなく、自身と対峙するための時間と空間を提供する場所。
「バー」の語源は「BAR」である。つまり、宿り木。疲れた翼をひととき休めさせる一本の枝。そして、「ひととき」であって、「住み着く」場所ではない。時が来れば。整理がつけば、また飛び立たなくてはいけない。
ひとときの休息を終えたお客様は席を立って帰って行く。来た時よりも、少しだけ。ほんの少しだけ軽くなって。そして、カウンターの上には目には見えないモノが置かれている。僕らバーテンダーは、その不要になった荷物(澱=オリ)を拾い集めて、捨てる。
こうして考えると。本来、バーなんてものは、出来れば要らないのかも知れない。でも、人の世はそうはいかない。みんな、何がしか重い荷物を抱えて日々を送っている。
みんなのココロが元気だと、うれしい。
大貫妙子。独自の美意識に基づく繊細で透明な歌世界を創り続けているシンガー=ソングライター。本作では、弦楽四重奏とピアノ、Wベースで、新たなピュア・アコースティックの世界へと聴く者を誘う。セルフカバー曲や、長谷川京子出演のアサヒビール「贅沢日和」CMソング『Shenandoah(シェナンドー)』を含む14曲収録。
選んだ1曲はT⑤『風の道』。セルフカバーである。オリジナル・ヴァージョンは6作目にあたる1982年発表のアルバム『Cliche(クリシェ)』(1982)に収録されている。
郷愁を誘うような。夏の眩しい陽射しの中を吹き抜ける風のような。フェビアン・レザ・パネの美しいピアノの旋律ではじまるスロー・ナンバー。大貫妙子の魅力は、短い言葉でその情景や心情をみごとに表現するところ。目を瞑って聴いていると、あたかも目の前にその光景があるような錯覚さえ覚える。
淡々と歌っているようで、穏やかに囁いているようで。一聴しただけでは心地好く思える妙子ワールド。しかし、そこには喜びと悲しみ、優しさと痛みが潜んでいる。だからこそ、聴く者はその美しさの向こう側に幸福な時間を感じるのだろう。
音楽は幸せのためにある。みんなのココロが元気だと、うれしい。
【風の道】
(作詞・作曲:大貫妙子)
はじめての場所
静かな街
ここであなたは
おおきくなる
庭さきに いま
錆ついてる
自転車がある
息を秘めて
今では他人と
呼ばれるふたりに
決して譲れぬ
生き方があった
とりとめもなく
歩くうちに
心はいつか
暖かくなる
今では他人と
呼ばれるふたりに
決して譲れぬ
生き方があった
おたがい寄り添う
月日を思えば
語る言葉もないほど
短い
コメント
コメント
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眺めることはできなくなったけど
新しい場所からの眺めも好きになれそうです。
一つ何かを失うということは
一つ何かを得るということ。
ずっとずっと前に読んだ
彼女のエッセイの一文と記憶しています。
コメント by ゆみ [訪問者] — 2007/05/08 @ 17:53
先日、お客様と呼ぶには長い、
そして近しい付き合いの女性の方から
こんなことを教えていただきました。
「新しい季節には、新しい出会いがあります」と。
抗わず、無理せず、素直に行きましょう。お互い。
間違いなく季節は変わるのですから・・・
コメント by itochan [メンバー] — 2007/05/10 @ 13:10